当学会について

会長からのメッセージ

  • 会長松橋隆治
    会長 松 橋 隆 治
  • エネルギー・資源学会の持続可能な発展に向けて

    Toward Sustainable Development of JSER

    この度、6月2日のエネルギー・資源学会第46期定時総会で第15代会長に選任された松橋隆治です。何卒よろしくお願い致します。

    本会は、石油危機後の1980年にエネルギー・資源研究会として発足し、1990年にエネルギー・資源学会に改称し、現在に至っております。私は博士課程に進学した1988年に入会し、それ以来、本学会と共に研究を進めて参りました。ちなみに、1988年はIPCC(気候変動に関する政府間会合)が設立され、トロントサミットで先進国がCO2排出量を削減する数値目標を初めて宣言した年でし

  • 会長松橋隆治
    会長 松 橋 隆 治

た。また、1989年にベルリンの壁が崩壊しており、東西冷戦が終結し、緊張緩和に向かう時代の流れもありました。このように、エネルギー・資源学会が発足した1990年前後は、エネルギーや地球環境問題だけではなく、世界史の転換点でもありました。

この度、6月2日のエネルギー・資源学会第46期定時総会で第15代会長に選任された松橋隆治です。何卒よろしくお願い致します。

本会は、石油危機後の1980年にエネルギー・資源研究会として発足し、1990年にエネルギー・資源学会に改称し、現在に至っております。私は博士課程に進学した1988年に入会し、それ以来、本学会と共に研究を進めて参りました。ちなみに、1988年はIPCC(気候変動に関する政府間会合)が設立され、トロントサミットで先進国がCO2排出量を削減する数値目標を初めて宣言した年でした。また、1989年にベルリンの壁が崩壊しており、東西冷戦が終結し、緊張緩和に向かう時代の流れもありました。このように、エネルギー・資源学会が発足した1990年前後は、エネルギーや地球環境問題だけではなく、世界史の転換点でもありました。

一方、2011年の東日本大震災と福島第一原発の事故以降、再生可能電源の全量固定価格買取制度が始まると共に、電力小売り事業の完全自由化と発送電分離が推進され、電力システムの変容につながっていきました。1990年以降、エネルギー・資源を巡る諸問題と気候変動緩和の重要性が高まる中、本学会は着実に役割を果たしてきましたが、2011年以降は、法人会員の減少と財務状況の悪化に苦しむようになりました。その後、2022年にはロシアのウクライナ侵攻が始まり、エネルギー・資源の経済性や安定供給に対する懸念が大幅に高まり、更にトランプ氏が米国の大統領に就任して以降、気候変動対策への否定的な姿勢を鮮明にし、世界は更なる混迷の中にあります。

かかる状況下で、本学会は、未だ2011年以降の低迷状態を抜け出せておりません。一方、エネルギー・資源の経済性や安定供給の問題は更に深刻化しており、本学会の重要性は寧ろ高まっています。深刻化する課題解決のための研究発表や各種事業推進の場として、本学会が低迷状態を脱し、持続可能な発展を遂げるにはどうしたら良いか。これは会長就任にあたっての最も重要な使命と認識しており、下記の方策を考えております。


(1)本学会の法人会員には多様な業種が参加しており、学会内では忌憚のない意見交換ができています。これは、学会の先達が築き上げた貴重な資産であります。したがって、今後は、産業界とアカデミアを含めた信頼関係を益々強化し、共通課題の下で連携し、公的機関や政府系の予算を共同で獲得する等の活動も期待していますし、既にそうした事例もあります。

(2)学会の収入源である法人会費、個人会費の減少は深刻です。この原因は、学会に参加せずともネット等で情報取得できること、経済低迷等により学会費を支払う意志が低下したこと等が考えられます。これに対する特効薬は存在しませんが、ネットでは得られない学会の魅力的な活動として、施設見学等を充実させることは一案です。エネルギー・資源に関する様々な施設を実際に見学し、関係者の説明を聞くことは、本学会の魅力の一つであり、これを支えてきたのは、会員企業等の皆様です。今後とも、会員企業等の継続的な支援をお願いすると共に、施設見学を拡充し、会員増にもつながるように考えます。

(3)学会の将来を長期的に支えるのは若手ですが、若手会員の研究業績としては、高評価の英文論文誌に投稿することが重要で、本学会誌への投稿や口頭発表を行うことは優先されないでしょう。一方、本学会内で結成された「エネルギー資源学会若手の会」からは、学会活性化のための有望な提案を頂いており、その活動は大いに期待されます。特に、昨年度から始まった若手の会主催のポスター発表は、通常の口頭発表と異なり、当該研究に関心を持つ企業や大学の関係者と発表者が直接意見交換できます。これは新しい機会(共同研究や就職等)につながる可能性があり、研究業績だけではない学会の価値となります。

私は、本学会と共に、教育、研究者として数十年を生きてきました。本学会の活動を、世界的なエネルギー・資源問題の変容と深刻化の文脈において振り返るとき、以下の確信に至りました。すなわち、本学会は、今後もエネルギー・資源問題の改善策を提示し、時に連携して社会実装、ルール形成や政策提案まで踏み込み、社会に貢献できる重要な組織であるとの確信です。

私が会長に就任した今日、改めて本学会が持つ価値を皆様と共に再認識し、その価値を最大限発揮できるよう微力を尽くしたいと考えております。皆様にも、本学会が持続可能な発展を遂げるための活発なご提言とご支援を頂きたく、お願い申し上げる次第です。